こんばんは。ネット心理教育の布団ちゃんです。
今回はメインでは抗うつ薬の話をし、それに加えて抗不安薬、睡眠導入剤についてのお話をします。
「抗うつ薬」はあまり双極性障害では使わない薬ですが、その理由についてご紹介します。
また、「睡眠導入剤」や「抗不安薬」の使い方や気をつけることを説明します。
薬の名前がたくさん出てきますが、一つひとつの名前にはあまり神経を集中させないで大丈夫です。
双極性障害の治療薬には、大きく分けて4つの種類があることはこれまでにもご紹介してきました。まずは、その再確認です。
治療の中心となるのは、気分安定薬(リーマスやデパケンなど)と、非定型抗精神病薬(セロクエル、ラエビリファイなど)です。
それに加えて、必要であれば下の2つの種類の薬(抗うつ薬、睡眠導入剤)を使うこともありますが、必須ではないので、使っていない人もいます。
次に、抗うつ薬の種類についてです。
抗うつ薬の種類は、上から順に、古いものから新しいものの順で書かれています。
問題となるのは古い薬(三環系、四環系抗うつ薬)で、これらは原則として双極性障害には使いません。
これらの抗うつ薬の種類は覚えなくても大丈夫ですが、漢字のもの(三環系、四環系抗うつ薬)は古いということだけ覚えておけばOKです。
マイナーなものが小さい字で青い文字で書かれています。
抗うつ薬のなかでも、分類できない「その他」のデジレルという薬や、「NaSSA(ナッサ)」という分類の薬であるレメロン(=リフレックス)は、眠くなるという特徴を持っています。
「SSRI」という種類は、現在の「うつ病」の治療の中心です。「
そのなかの「トリンテリックス」という薬は、最近出たばかりの新しい抗うつ薬です。
「SSRI」に似た効き方の「SNRI」という種類もあります。
では、双極性障害のうつ状態に対して行われる治療について見ていきましょう。
ここでは、治療の方針が書かれた、日本うつ病学会の「ガイドライン」を確認します。
(このスライドの文字の色ですが、黒が気分安定薬、青が非定型抗精神病薬で書かれています。)
もっとも推奨されるものが1に書かれた薬です。
リーマス、セロクエル、ジプレキサ、ラミクタールの順で推奨されます。
1で効果がなかった場合や、1の薬を飲めない場合などに対して、次に推奨されるものが2に書かれています。
2番目に推奨される治療法では、リーマスやラミクタールを組み合わせる方法や、ECTと呼ばれる「電気けいれん療法」(麻酔をして電気ショックをする治療法)が書かれています。
赤い字で書かれている内容は、推奨されない方法で、今回のお話である「抗うつ薬」に関わってきます。
まずは、古いタイプの抗うつ薬である「三環系抗うつ薬」は、使用自体が推奨されてません。
使うとしたら比較的新しいタイプの抗うつ薬である「SSRI」ですが、SSRIも、それだけでは使いません。使うとしたら、SSRIと気分安定薬や非定型抗精神病薬などと組み合わせて使うことが推奨されています。
双極性障害の治療には抗うつ薬は基本的にあまり使いませんが、例外もあります。
それは、他の精神疾患を併発している場合です。
他の精神疾患のなかでも、強迫症、パニック症を併発している場合には、その治療にSSRIを用います。
ここまでの流れで、抗うつ薬は決しておすすめになっていないということをお分かりいただけたと思いますが、それは何故でしょうか。
うつ病と診断されて、そのしばらく後に双極性障害に診断が変わった方は実感れているかもしれませんが、双極性障害に対して抗うつ薬は効果が出づらいとされています。
それだけでなく、双極性障害のうつの状態に対して抗うつ薬を用いると、様々なリスクが生じてしまいます。
1.躁転や、軽躁転のリスク:躁状態や軽躁状態になってしまうリスクがあります。これは体験したことがある方も居るのではないでしょうか。
2.ラピッドサイクラー化するリスク:1年に4回以上、躁や軽躁、抑うつのエピソードを繰り返す状態である、ラピッドサイクラーになってしまうリスクがあります。ラピッドサイクラーに単体で効く薬は無く、難治性とされています。
3.自殺のリスクを高める:双極性障害に限らず、SSRIには自殺のリスクを高める副作用があり、未成年には使うことのできない薬です。
4.効果がないというリスク:気分安定薬に加えて抗うつ薬を使っても、実は効果があまりないのではないかという研究がなされており、効果がないということは副作用だけあったり、時間を無為に使ってしまうリスクにつながります。
とはいえ、双極性障害の患者さんのなかでも抗うつ薬を飲んだことがある方は居ると思います。どうしてでしょうか。
それは、抗うつ薬の使用に関しては、国内外の医師の中でも議論がなされている最中だからです。
医師によっては、上記のリスクに気をつけながらも、短期間に限定して抗うつ薬を使うことがあります。
ここで、双極性障害に抗うつ薬を使わないほうが良い派と、使っても良い派の主張をみましょう。
使うべきでない:効果が上がらないし、リスクが高まる
使って良い:どうしてもうつ状態の治療効果が上がらないときに一時的に
抗うつ薬の使用に関しては、最近の治療の流れも関係してきます。
最近では、双極性障害のうつ状態に対して効果のある非定型抗精神病薬(ジプレキサ、セロクエル、ラツーダなど)の登場によって、抗うつ薬を使わない流れが更に進んでいます。
では次に、睡眠導入剤についての話題に移ります。
睡眠導入剤は「眠剤」、「睡眠薬」など色々な呼ばれ方をされていますが、どれも同じ、睡眠を促す薬のことです。
なかなか眠れない時は薬に頼るのではなく、まずは生活習慣を改善することを考えましょう。
昼寝をしすぎていないか、日中に太陽の光を浴びているか、寝る前にカフェインを摂りすぎていないか、夜スマホやPCを見すぎていないかなどをチェックし睡眠を妨げている問題を取り除きます。
生活習慣を改善してもなお、睡眠がうまく行かない場合に睡眠導入剤の使用を検討します。できるだけ薬に頼らないことが大切です。
睡眠導入剤は不眠の症状を見て選択します。寝つきが悪いのか、夜中に目が覚めてしまうのか、あるいは全然眠らなくても平気なので眠る気がしない、などです。
睡眠導入剤はベンゾジアゼピン系とそれ以外の薬に大きく2つに分類されます。
ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤は「ベンゾジアゼピン骨格」という化学構造を持っています。
ルネスタ、アモバン、マイスリーなどは厳密にいえばベンゾジアゼピン骨格そのものはもっていませんが、働き方は同じなので、ここではベンゾジアゼピン系に含めています。
ご存じの方も多いと思いますが、ベンゾジアゼピン系には依存性があります。早い人では2週間服用すると依存が形成され、そうすると、なかなかやめづらくなってしまいます。そのためベンゾジアゼピン系を安易には使うべきでないということが一般的にいわれるようになってきました。
そのため最初に選択されるのは「ロゼレム」や「ベルソムラ」、最近出たばかりの「デエビゴ」が好ましいとされています。双極性障害の方は日内リズムが乱れていることが多いのですが、「ロゼレム」は日内リズムを整える目的で使用されたりもします。
また、古いタイプの抗精神病薬である「定型抗精神病薬」や抗うつ薬である「デジレル」の眠くなる作用を利用して、睡眠導入剤として使うことがあります。
さて、「ベンゾジアゼピン」を使うと双極性障害に悪影響があるのでしょうか?
結論から述べると、ベンゾジアゼピン系を双極性障害の患者が飲んでも、その薬が直接的な原因となって体調が悪化することはありません。
薬に起因するものではなく、生活リズムの乱れによっては体調が悪化することがあるので、睡眠導入剤が出ている場合には正しく服用し、正しい日内リズムを維持しましょう。
最後に、抗不安薬について説明します。
抗不安薬は、不安やイライラなどに効く薬です。
不安でもそうでなくても「1日3回飲む」などの飲み方ではなく、不安なときだけに飲む「頓服」として使われることが多いです。
こちらも先ほど紹介した「ベンゾジアゼピン系」と呼ばれる種類です。
その依存性について少し話しましたが、いま現在「ベンゾジアゼピン系」の睡眠導入剤や抗不安薬を飲んでいる方で、その依存性について不安になってしまった方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、ベンゾジアゼピン系をやめていくときのポイントを話して、今日のサマリーを締めたいと思います。
ベンゾジアゼピン系をやめていくときには、勝手にいきなりやめないことが非常に重要です。医師の処方で、少しずつ少しずつ減薬していきます。
どのくらいの期間を掛けるかというと、数年単位でじっくりと減らしていきます。
また、現在睡眠導入剤や抗不安薬を飲んでいる方でも、双極性障害の治療が安定してくると次第に、「眠れない」とか「不安」「イライラ」といった症状が治まってきます。
ベンゾジアゼピン系の薬を減らしたり、やめたりするのを焦らずに、双極性障害の治療が安定してからでも大丈夫だということを覚えておいてください。
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▶次回は2020年8月23日(日)21時~です。
You Tube LIVEに合わせて、グループワークである「ゼミ」も始まりました。
▶次回ゼミは今日、2020年8月3日(月)21時からです。
詳細については、ゼミについてのページをご確認ください。
ライブ配信もゼミも、出欠などを取らないオープンな場なので、是非見てみてください。
【最後に】
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
今回のネット心理教育@Zoomはいかがでしたでしょうか?
・今回の内容の動画はグループページから。
・宿題はこちらから。
・次回のZoomは、2020年8月8日(土)の14時から「妊娠と遺伝カウンセリング」です。
【ご案内】2021年1月22日更新
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