こんにちは。ネット心理教育の布団ちゃんです。
今回はいよいよ最終回ということで、これまでのネット心理教育が、どんな考えに基づいてやってきたかを中心に話しました。
まずは、生物・心理・社会モデルの紹介をしました。
精神疾患は「脳の病気」「心の病気」など、色々なことが言われますが、単純に一つの原因ではなくて、生物、心理、社会的な要因が関係しあっているという考え方です。
WHOの定義による「健康」とは、単に肉体的(=生物)に問題がないことを言うのではなく、精神的(=心理)にも、社会的(=社会)にも、完全に問題ないことをいいます。
ここにも、生物・心理・社会の要素が含まれていますね。
双極症を始めとする精神疾患で考えると、
生物: 脳の働き、生活リズムの影響などで、ここにアプローチするのは薬がよいでしょう。関わってくる専門職は、医師、薬剤師です。
心理: ストレスに弱い面、考え方や捉え方の歪みなどで、ここにアプローチするのは心理士(師)です。
社会: 要因となる生活環境(学校・会社・家族など)、人間関係のストレスなどで、ここにアプローチするのは、社会福祉士や精神保健福祉士といった、いわゆるソーシャルワーカーです。
このモデルに基づいて、生物の部分は薬剤師である窓師、心理の部分は公認心理師、そして社会の部分を社会福祉士として布団ちゃんが担当し、このネット心理教育を行なってきました。
生物、心理、社会の要因が、それぞれに関係しあって病気が成り立っているので、薬だけ飲んで(身体だけを診ていても)良くならないし、心理士だけががんばっても良くならないです。
3つの側面から問題解決を図ることが大切です。
この3つが改善し社会に復帰できて初めて「良くなった」と言えます。
続いて、精神疾患は患者自身が中心となって治療に取り組むという話をしました。
外科手術では、医師がメスを握り、患者は麻酔下でただ横たわるだけという感じで、受け身になりますが、精神疾患では病気を治すのに患者本人が大きく関与していると言えます。では患者自身はどのよう行動していったらよいのでしょうか?
ここを支えるのが心理教育です。心理教育によって、疾患や日々の過ごし方、病気との付き合い方を身につけることができます。
右側にある円の図で分かるように、患者の周りには沢山の頼るべき人が居ます。患者が中心となって孤独に戦うのではなく、専門職や家族を頼って、一緒に戦っていくイメージです。いろいろな人を適宜頼るようにしましょう。
では、医療機関でスタッフをどのように活用したらいいのでしょう。
まず、どんな病院が良いかという質問をよく受けますが、それについての考えです。
精神疾患では、有名な病院、丁寧に話を聞いてくれる医師、ネットで評判の良い病院が必ずしも全員に合う病院や医師とは限りません。
重要なのは、主治医との信頼関係が構築できるかどうかです。つまり主治医との相性が合うかどうかが一番だということです。
話を長く聞いてれくれる医師が合うという患者もいれば、短時間で要領よく的確に聞いてくれる医師が合うという患者も居ます。
一般的にドクターショッピングは良くないものとして受け止められますが、現在の主治医と信頼関係を築けない場合、必要ならばドクターショッピングをするのも悪いことではないと考えます。
主治医は長い期間一緒に病気に対して取り組むパートナーであり、それが治療における中心です。
では薬や心理療法、社会福祉サービスに関して、主治医だけではカバーしきれないと感じたときは、どうしたら良いでしょう。
こちらも生物・心理・社会モデルに基づいて説明していきます。
「頓服が実は足りない」「薬を変えてほしい」「なぜこの薬が処方されているのか」などの薬に関する疑問や要望があるとき薬剤師に言うと、それを病院の医師にフィードバックできます。例えばもし薬を変えなかった場合には、なぜ変えなかったかの理由を知ることも出来ます。
また、「かかりつけ薬剤師」という制度があります。かかりつけ薬剤師は、24時間患者の悩みに対応してくれます。
心の問題に関しては、病院内・外に居る心理士を頼ってみても良いでしょう。
その際には、医師に「カウンセリングを受けて良いですか?」「カウンセリングを受けたいのですが」と聞いてみて下さい。
社会福祉サービスに関しては、ソーシャルワーカーが病院にいるかどうか、受付の方などにまず聞いてみましょう。病院に居ない場合は、役所の障害福祉課に「自分がどんな福祉サービスが受けられるか知りたいです」と問い合わせてみてください。
様々な相談先があるのですが、それらを羅列してもどこになんと問い合わせたら良いのか分からなくなると考え、このスライドでは、一箇所に絞りました。
続いて患者が使えるツールについて説明しました。
診察のときに言い忘れが無いように、このX週間のメモを書いておき、それを見ながら医師に伝えると良いでしょう。
そのメモを、お薬手帳に書くという方法もあります。お薬手帳にはシールが貼ってあるだけと考えている方も多いのですが、余白に症状や体調、体重などを書き込むと、医師に伝える際の手助けになります。
お薬手帳に患者が書き込みをしても全く問題ないので積極的に活用してください。
お薬手帳の活用術に関しては、詳しくはツイートを読んで下さいね。
様々なアプリもこれまで紹介してきました。
睡眠や生活リズムを記録するもの、服薬の記録をするもの、認知行動療法を支援してくれるアプリなど活用法は様々です。
疾患に関してまだあまり分かっていない家族向けには、ウェブで手に入れることの出来る、双極症に関するパンフレットを渡すのも手です。
日本うつ病学会や各製薬会社がパンフレットを公開していますので、見てみてください。
信頼出来るウェブサイトを知っておくことも必要です。これも沢山あるのですが、日本うつ病学会と厚生労働省を抑えておけば大丈夫です。
さて、先に紹介した「生物・心理・社会モデル」ですが、今回の心理教育の元になったマニュアルでは、社会の部分が弱かったと言えます。
その部分の補強として最後にたった一つだけ重要なことをお話します。
社会との関わりにおいて重要なのは「誰かと繋がっていること」です。
「誰か」とは「誰でも」です。家族、親戚、友人、パートナー、地域の仲間、デイケアの仲間、リアルの当事者会、ピアカウンセリング、ネットでの当事者会など様々ですが、とにかく誰かと繋がってください。
その誰かと何をすればいいのでしょうか?
それは、「きちんと話をして、きちんと話を聞いてもらえる関係」の構築です。
ここで、心理療法の比較的新しい手法であるオープンダイアローグについて紹介したいと思います。
オープンダイアローグでは、専門家(看護師、心理士、医師など)と家族と患者で輪になって、患者の話をとことん聞きます。
オープンダイアローグでは、話を聞くことによって原因を探すわけでもなく、結論を求めるわけでもなく、ただとことん話を聞きます。
「話を聞く」ことは当たり前のことかもしれないけれど、その当たり前がなかなか医療の現場では実現できていないのではないでしょうか。
オープンダイアローグはその発祥の地のフィンランドでは主に統合失調症の患者に対して行われ、その治療経過が良い(なんと統合失調症が薬なしで治る!)ということで話題になっています。
私自身は薬を否定する立場には居ませんが、この効果については注目しています。
この、しっかり聞いてもらう体験は、孤独や孤立と真逆であると言えます。
誠意をもって傾聴し、共感するという姿勢は、オープンダイアローグに限らず真似できるのではないかと思います。日々の会話をきちんとすることが重要です。
次に、今までの総まとめをしました。
全21回5ヶ月に及ぶ長丁場でしたが、長いのには理由があり、患者として知っておくべきことがきちっと書かれているということを実感しながら毎回話していました。
各回、1個1個の重みがあり、どれも外せない内容でした。
なかでもライフチャート、自分用の消火器カードはメインであったと言えます。
最後に、心理教育の効果を紹介しました。
心理教育は、双極症においては第一選択の、まず選ぶべき心理療法です。
このネット心理教育の元になったマニュアルを書いたColomによる研究では、120名の双極症患者を半分に分け、一方には普通の治療をして、もう一方には心理教育をしました。
すると、心理教育を受けたグループで、明らかに寛解状態が長くなったという結果が出ました。
この理由としては生活リズムやストレスに対して意識的になった点や、患者自身が消火器カードに従って躁やうつが起こり始めの段階で対応したことが考えられます。
今後について
1シーズンが今回で終わったわけですが、心理教育は繰り返し受けることによる効果も期待されます。
6月からのネット心理教育はYou Tube LIVEで行う予定です。ゼミも引き続きzoomで開きます。
日程などはTwitterでお知らせしますので、また是非ご参加ください。
最後に
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。 今回のネット心理教育ツイキャスはいかがでしたでしょうか?
・今回の内容の動画は(工事中)。
・クイズ&アンケートはこちらから。
【ご案内】2021年1月22日更新
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