前回からの3回のセッションは、自分の躁やうつに気づいて対処していく方法を見出す、非常に重要な回になります。
第6回で使用したライフチャートをお持ちの方は、参考に使いますのでお手元にご用意下さい。
今回のネット心理教育は、うつと混合の早期発見についてです。
うつと混合エピソードについては第5回でもやりましたので、読んでみてください。
まずは抑うつエピソードと混合エピソードの、診断基準を振り返りました。
抑うつエピソードでは、行動・思考・感情の3つの側面から症状が5つ以上、2週間以上持続するときにエピソードになります。
混合エピソードは分かりづらい状況なのですが、
・抑うつエピソードを満たすと同時に、気分の高揚などの躁の症状のいくつかがある状態、
もしくは、
・躁/軽躁エピソードを満たすと同時に抑うつ気分などのうつの症状のいくつかがある状態のことを言います。
躁であるのにうつの症状もあるときや、うつであるのに躁の症状もあるときの状態のことを「混合エピソード」と呼びます。この混合エピソードには、うつや躁のときのように○○日以上といった日数の決まりはありません。
次に、うつの兆候の例を挙げていきました。
これらの兆候がご自身の場合どんな風に現れるのか、考えてみて下さい。
うつにおいて最も頻繁に見られる兆候は、無気力です。無気力になるとやるべきことが遂行できなくなり、自分や周りから責められ、自己評価が低下します。そうすると更に抑うつの症状が悪化し、悪循環に陥りやすいです。
記憶力や注意力の低下、学業や仕事をする機能の低下も見られます。
疲労や身体的な不調も出てきます。これらの兆候に気づかないと、エピソードは悪化していきます。
また、普段楽しいと思うことに対して興味を持てなくなったり、楽しめなくなったりもします。例えば映画を観るのが好きだった人が映画を観なくなったり、友人との会話に興味がなくなったり、土日のどちらも外出せずに家に引きこもるなどの例が挙げられます。
それと、以前は心配していなかったことに対して過剰に心配になったり、心配し始めたり、何回も考えるようになるのも特徴的です。
会話が少なくなったり、何を話せばいいのか分からなくなってしまう状態も早期症状です。
患者さんに近しいひとの気づきが、早期発見に有効な場合もあります。
その一方で、双極症に対する適切な知識を持っていない場合は、うつの兆候を「サボり」などと誤解し、患者さんを傷つけることもあります。
兆候の例は、ひとによって様々な現れ方があります。
具体的に、窓師や思想くんの場合どんな兆候が出るのかを紹介してもらいました。
【うつ】
窓師のうつの兆候で特徴的なのは、気持ちがふさぐとか、落ち込む気分、辛い気分などはあまりなく、身体的な症状ばかり出ることです。
いわゆる「うつ」でイメージする落ち込みがないうつもあります。この点については後ほどにも解説をします。
【混合】
混合状態について、アンケートで分かりづらかったという声をいただいたので、例を詳しく見ていきましょう。例と全く同じということはないかもしれませんが、似た要素を見つけることが出来たら嬉しいです。
・躁のときのように単にイライラするのではなく、気持ちが沈んでいるのにイライラする
・周りから大丈夫と聞かれたときに「大丈夫じゃないよ」と逆ギレする
・相手の言っていることが良くわからず、会話がスムーズにいかない
・なにかに執着するのではなく「もう良いよ」と放り投げる
・なにかじーっと我慢して聞いていられない「もう良い!」とシャットダウンする
・テンション高いのだが「ああ~もうダメ!」と過剰なテンションから放り投げる
思想くんの場合はどうでしょうか。
【うつ】
総括してどういう特徴があるかと思想くんが振り返ってみると、社会性がなくなるが挙げられると話していました。なんとなく閉鎖的になって、周りからの目をまったく気にしなくなるということです。
【混合】
・走りたくなる:走っても満たされないけど疲れたい。疲れた状態のほうが落ち着く。自分を壊したくなる。
・「どうしてこうやって動いてくれないんだろう」とイライラする。躁状態のときは楽しい気分であることが多いのに、怒りっぽくなる。
・歩いているときに暗い気分になって、帰宅してそわそわする。安定しない。
・イライラしながら寝ている。矛盾した状態が自分の中にある。例えば、疲れても疲れても疲れきらないことや、休んでも休んでも休みきらないことが挙げられる。
・普段より、ひとの細かい癖などが気になっていらいらする
まとめると、うつ状態では「気持ちの抵抗力」が下がるイメージだが、混合ではうつ状態の部分もあるので、イライラの躁の部分が色濃く出てしまうのではないかと思想くんは振り返っていました。
では、うつや混合のときに気をつけるべきことは何でしょう?
・精神活性物質:
うつをごまかすために、精神状態を上げたり下げたりする物質を使うようになることを避けましょう。
コーヒーやエナジードリンクでテンションをあげようとしたり、昔処方されていたデパスで気分を落ち着けようとしたり、アルコールで嫌な気持ちをごまかしたり、眠るために使ったりはやめましょう。
そうすることによって、①本当の気分の波が見えなくなる、②依存になってしまうなどの弊害が生じます。
・悲哀を伴わないうつがある:
うつ=悲しい気持ち、落ち込んだ気持ちという、気持ちだけ重視して自分を観察していると、うつを見逃すこともあります。
窓師が例として挙げたように、ただひたすらにだるいといった症状もうつの症状です。他にも疲労感、身体的に調子が悪い、睡眠時間が増えている、空虚な感じがするなど、これらもうつの症状です。
・抗うつ薬:
自分で勝手に抗うつ薬を開始する、医師の処方ではなく、例えば前回ひどいうつ状態になったときに処方された抗うつ薬を勝手に再開したり、いま処方されている抗うつ薬の量を勝手に増やしたりしないことです。
これもまた、現在の本当の気分の落ち込みが見えなくなる原因になります。
ということで今回は、うつと混合エピソードを早期発見するためのポイントをまとめました。
宣伝
ネット心理教育のゼミでは、自分の場合の躁の例、うつの例などをグループワークを通じて、みんなで話し合っていろいろな意見や体験談を出します。
【↓思想くんからゼミの紹介文です↓】
毎週月、木曜日の21:00~22:00に開催しています。
本編の第15,16,17回は"自分なりに考えて対策を練る"ステップになるので、ゼミを利用してもらえたらと思います。
本編は講義的な性質を持つ言葉で説明をする面がありますが、ゼミでは当事者同士の感覚的な言葉も含めて病気について一緒に考えることが出来るので、新しい発見を見つけることができるはずです。
双極症の当事者の方も、そうでない方も、ネット心理教育に関心のある方の参加をお待ちしています。
最後に
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
今回の心理教育キャスはいかがでしたでしょうか?
・今回の内容のYouTubeはこちらから。
・次回配信は、今日2020年5月3日の21時から「新しい病相が見つかったら?」という内容でツイキャスをします。
是非来てください!
【ご案内】2021年1月22日更新
Comments